排尿自立指導料
昨年からよく耳にするこの言葉。皆さんはしっかりと理解していますか?
- 「言葉は聞いたことあるけど、どんなものなの?何であんなに話題になっているの?」
- 「院内に排尿ケアチームっていうのができたけど、あの人たちは何のために活動しているの?」
- 「具体的に、病棟看護師は何をすればいいの?」
私の周囲の病棟看護師はこのような印象で、ほとんどの方が理解していませんでした。
院内で研修なども受けているはずなのですが、なぜがあまり周知されていないように思われます。
今回は、そのような方に向けて排尿自立指導料についてまとめていきたいと思います。
超簡単に言えば・・・
排尿自立指導料が話題になっているのは、単純です。病院として「お金」になるからです。
国「ある条件を満たして患者の排尿ケアに関わることで、お金をあげるよ~。だからみんな頑張ってね」
こんなことを言われたので、お金目当てで全国の病院が動き始めたのです。
ポイントは「連携」という言葉
具体的に、国が出した通知を見てみましょう。
B005−9 排尿自立指導料
(1) 排尿自立指導料は、当該保険医療機関に排尿に関するケアに係る専 門的知識を有した多職種からなるチーム(以下「排尿ケアチーム」という。)を設置し、当該患者の診療を担う医師、看護師等が、排尿ケアチームと連携して、当該患者の排尿自立の可能性及び下部尿路機能を評価し、排尿誘導等の保存療法、リハビリテーション、薬物療法等を組み合わせるなど、下部尿路機能の回復のための包括的なケア(以下「包括的排尿ケア」という。)を実施することを評価するものである。(平成28年3月4日保医発0304第3号 通知)
*黄色マーカーおよび赤テキスト色は当サイトで付けました
つまり、
「排尿ケアチームと病棟が一緒になって下部尿路機能障害に対して介入してね」
ということです。
重要なのは「連携」という言葉。通知の後半ではこう明記されています。
(7)(前略)排尿ケアチームによる関与と、病棟の看護師等による患者への直接的な指導・援助のうち、いずれか片方のみしか行われなかった週については算定できない。
(同上)
このように、排尿ケアチームだけの介入では排尿自立指導料として認められないのです。
また、対象患者は以下のように決められています。
(2)当該指導料は、次のいずれかに該当する者について算定できる
ア 尿道カテーテル抜去後に、尿失禁、尿閉等の下部尿路機能障害の症状を有するもの
イ 尿道カテーテル留置中の患者であって、尿道カテーテル抜去後に下部尿路機能障害を生ずると見込まれるもの
(同上)
尿道カテーテルが挿入されている患者ならば、手当たり次第に対象者にして、病院がお金をもらうことはできないようになっていますね。
排尿自立指導の実際
具体的な排尿自立指導料の例を挙げてみようと思います。
- Aさん 60歳 男性
- 食道癌のESD目的に入院。
- 既往歴:特になし
- ESD当日~翌日まで尿道カテーテル挿入指示あり。
- ESD翌日、尿道カテーテル抜去したが、自尿なし。残尿測定にて400ml以上の表示あるも尿意なく間歇導尿施行している状態が3日続いている。
明らかに尿道カテーテルによる下部尿路機能障害が生じてします。
さて、この患者に対する排尿自立指導料を算定するための流れは、以下のようになっています。
- 院内のスクリーニングによる患者抽出にて該当
- 病棟の排尿ケアリンクナースが情報収集
現病歴、既往歴、排尿日誌、残尿測定、ADL、などなど - 「病棟の排尿ケアリンクナース」と「排尿ケアチーム」が包括的排尿ケア計画書を作成
- 計画書に沿って病棟看護師がケアを実施・評価する
- 上記について、カルテに記載する
Aさんに対して、包括的排尿ケア計画書に沿って2週間介入した結果、自尿が出るようになり、残尿も0mlになりました。排尿は自立したと考えれるため、病棟看護師と排尿ケアチームが話し合って、介入を終了しました。
排尿自立指導料は週1回(200点・2000円)に限り、6回まで算定できるので、Aさんに対しては2回分の計4000円分の算定を行うことができます。
注意点
病棟看護師が気を付けなければいけないのは、前項の5.カルテ記載についてです。
すでに説明したように、排尿ケアチームだけの介入では排尿自立指導料として認められません。
Aさんに対して、実際に排尿日誌をつけて残尿測定をするのはもちろん病棟看護師です。しかし、カルテ記載がなければ「病棟看護師の介入」が証明できないことになります。
具体的には、
・排尿ケアチームと共に包括的排尿ケア計画書を作成を作成したことと、その内容を記載する
・計画書に沿ってケアを実施、評価したこと記載する
この2点を意識したカルテ記載が求められます。
また、特に既往歴のないAさんには、尿道カテーテル抜去後の下部尿路機能障害が予測できませんでした。そのため、症状が出てから3日後の介入となってしまいました。
しかし、脳梗塞や前立腺肥大などの既往を有する場合は予測が可能であり、スクリーニングにより対象者となります。その場合には尿道カテーテル挿入中より、下部尿路機能障害発生を予測した介入を始めることができます。
排尿自立指導料はみんなが嬉しい・・・・?
なぜ、この排尿自立指導料が開始されたのでしょうか。
国としては、尿道カテーテル挿入による下部尿路機能障害を減少させることでこんなメリットがあります。
- 在院日数の短縮
- 下部尿路機能障害に対する医療費の削減(抗生剤等)
病院としてもメリットがあり、
- 在院日数の短縮
- お金をもらえる
患者としても、
- 下部尿路機能障害を起こすことなく退院できる
このように、みんなが嬉しい制度なのかというと、そうでもないだろうというのが私の意見です。
なぜならば、看護師をはじめとした病院スタッフには、直接的なメリットが少ないのが現状だからです。このシステムを理解するために時間をかけて研修などに出席し、書類関係や看護記録の量が増えるのはメリットではなくデメリットですよね。
まとめ
最後は愚痴のようになってしまいましたが、排尿自立指導料についてまとめてみました。あくまでも、「排尿自立指導料ってなに?」という方を対象とした内容になっています。具体的な患者スクリーニングや下部尿路機能障害の定義などについては、機会があればまとめていくつもりです。
これを読んだ病棟看護師さんが、明日から排尿自立指導を意識して仕事に臨んでもらえると嬉しいです。
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