学校現場で初めて出会った、トゥレット症について【後編】

学校・教育

⇨学校現場で初めて出会った、トゥレット症について【前編】では、トゥレット症の原因や症状について紹介しました。後編では病気の確率や現在の治療法についてまとめています。

確率

症状の軽度はあれど、決して珍しいものではありません。トゥレット症についてはおよそ1000人に3~8人くらいいるのではないかと言われています。まばたきなどの単純チックについては子どもの10人に1人くらい経験があるとされていますが、症状が急に出たり出なくなったりするので、正確な数字を把握するのは困難でわかっていません。

数字に対して、そこまで頻繁に見かけないというイメージがあると思いますが、これは本人や家族が人目を避ける傾向にあることが原因でしょう。内面的な病気と異なり、トゥレット症については外見から見た行動で”変な人”と思われてしまいます。初対面の人が叫び声や突然の挙動不審を見かけると近寄りがたいイメージを持つのも仕方ないでしょう。外に出るのが恐い、人の視線が気になる、こうなるとさらに症状が悪化するため、家に引きこもりがちになってしまうという悪循環が起こります。

治療法

原因が解明されいない病気のため、トゥレット症を完治する治療法はまだ出てきていません。今の治療法の基本は、症状を理解し、うまく付き合えるように環境を調節したり、支援する家族へのガイダンスを充実させることです。症状によっては薬物療法が選択されることがありますが「これが効く」というものはありません。人によって効果が異なりますし、厄介なのは同じ人が同じ薬を服用していても、時期によって効果が薄れるということです。

「去年はこの薬を服用していて調子が良かったのに、今年から効かなくなってしまった」

ということが起こりえます。その一方で、たとえ薬が合っていなくても症状が出ない場合もあります。どういった条件で症状を抑えられるのかがわからない、というのも厄介なところです。

知っておいて欲しいこと

学校現場でトゥレット症の生徒と接することで、「一番苦しんでいるのは本人」ということを気付かされました。それまで、障がいを支える家族や周りの人の苦労ばかりに意識がいっていましたが、そうではありませんでした。とくに症状については本人が「出したくない」と思っていても出てしまうものです。どうにもならない身体に対して、一番つらく、しんどい思いをしているのは本人であるということに気付かされました。

病気によって身体がコントロールできないとしても、感情があり、思考能力も普通の人となんら変わりありません。だからこそ、症状がでている自分に対しての周囲の視線が気になるし、敏感に感じ取ってしまいます。「家族に迷惑をかけている」「周りに変な目で見られている」ということも自分の中で理解しています。だからこそつらいのです。周りに理解はされないけれど、自分は理解している。この状況だと周りに自分のつらさを共有することもできません。

また、時期によって症状の重さに差があることも、周囲の人たちの勘違いを生むことになります。症状が少なく、調子が良い時の状態を知っている人は、「前みたいに我慢できるでしょう」と思いがちです。この病気を良く知らないと、心無い言葉をかけてしまうこともあります。本人もやりたくてやっているわけではありません、コントロールできるものならしたいに決まっています。こういった周囲の無理解は、本人にとって本当につらい経験だと思います。

まとめ

トゥレット症については、ひと昔前まで「心の病」とされていました。今でこそ脳の異常ということが判明していますが、それまでは親の教育が悪い、家庭環境が原因などとされていたため、サポートする家族も精神的につらいものがあったと思います。もっと愛情を注いで、育て方を勉強しなさい、というのはまったくお門違いなアドバイスです。まずは病気や症状を理解し、本人がどうしたいのかを一番に考えていけるようにしたいです。少しでも優しい視線と、ちょっとした知識を持つことでやさしい社会がつくられていくことを願っています。

tami
tami

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