自宅によく届くマンションや物件購入のチラシ。そのどれもが魅力的なものばかりですが、特に目を引くのが「家賃並みの値段で、マイホーム購入」というキャッチーなフレーズです。ようは、家賃を払い続けても家は自分のものにならないが、住宅ローンなら払い終えれば家は自分のものだからお得だ――と言いたいわけです。私の知人もこの言葉を信じ「どうせ払うならローン返済にお金を使いたい!」と20代の内に4000万円のマイホームを建てていました。とてつもなく魅力的なこのキャッチフレーズですが、果たして事実なのでしょうか?今回は不動産関連の情報をかき集め、このフレーズが事実なのか検証していこうと思います。
毎月7万円の返済でいくら借りられる?
今回は、マイホーム一括購入ではなく、銀行から借り入れて住宅ローンを返済していくことを想定して話を進めていきます。
まず、毎月の家賃と同じ金額の住宅ローンを、毎月返済額に当てはめて「借入可能額」をシミュレーションしてみます。【借入期間35年、変動金利(0.415%※ネット銀行の平均的な金利)、年収は考慮しない】という条件で計算すると
毎月返済額(現在の家賃)
が7万円であれば、
2,736万円が借りられる
という計算結果が出てきます。これがもし毎月20万円支払えるということであれば、7817万円借りられる計算になりますので、7000万円超えの高額物件にも手が届くように思えてしまいますね。
※この試算は「変動金利(0.415%)」を基準にしているので、これよりも金利が高い住宅ローンを利用すれば、借入可能額は少なくなり、これよりも金利が低い住宅ローンを利用すれば、借入可能額は多くなります。多くの不動産会社は借入可能額を試算するときに変動金利を使っていますが、それは借入可能額を高く見積もれるからです。変動金利が上昇した場合、毎月支払額が増えることになりますが、不動産会社の試算でそれは考慮していないので気をつけて下さい。
予想外の出費
結構な金額のお金が借りられることがわかると、夢のマイホームが現実味を帯びてきますね。年収が十分あり、住宅ローンの返済額が家賃並みであれば「家賃並みの値段で、マイホームを購入」することは可能なように思えてきます。しかしちょっと待ってください。「住宅を購入する」場合は、他にもいろいろな費用が必要になります。というのも、家を買うというのは、維持管理も自分でしなければならないからです。
例えば、分譲マンションを購入した場合。住宅ローン以外に毎月の「管理費」や「修繕積立金」も必要になります。これらを合わせて一般的に毎月2万〜3万円前後が、マンションに住み続けている間ランニングコストとしてかかってきます。
戸建て住宅なら管理費
や修繕費はいらない?
戸建て住宅の場合は「マンションと違って修繕積立金がいらない」と考える方が多いですが、これは間違いです。維持管理を自分でしなければならないので、修繕工事が必要になればまとまった費用を自分で用意して支払わなければいけません。
つまり、自分で修繕工事用にお金を積み立てておかなければいけないというわけです。どういう判断をするにせよ、快適な状態を維持するには、ランニングコストがかかるということを知っておかないと後々痛い目にあうということです。
固定資産税
予想外の出費はこれだけでは終わりません。賃貸のときには必要がなかった負担、それが
【固定資産税!!】
土地や家屋を所有すると、毎年「固定資産税」というものを支払わなければいけません(これが結構厄介なやつなんです…)課税額は土地、家屋に対して固定資産税評価額があるので、それをベースにして算出することになります。
例えば、購入したマンションの固定資産税評価額が2000万円だとすれば、税金として28万円ほど必要になります。ただし、自宅の場合「小規模住宅用地(200㎡以下の部分)」については、6分の1に減免する措置などがあります。また自治体によって「都市計画税」も課税されるので、さらに支出は増えていきます。自宅であれば、毎月1〜3万円程度と考えておけば間違いないでしょう。
要するに、賃貸に住んでいるときにはかからなかった費用(月額の管理費、修繕積立金ほか、固定資産税など)がいろいろと必要になってくるわけです。もうお分かりの方もいるかもしれませんが、これらのランニングコストについては「家賃並みの値段で、マイホーム購入」のキャッチフレーズでは無視されています。
家賃=毎月返済額ではない
住宅購入を考えるきっかけとして、毎月の家賃を目安として住宅ローンの毎月返済額を決めるのは誰でもやることです。しかし、これまで書いてきたように、自宅を所有することでの出費も多く、金利が変わらないとも限りません。これらのリスクを考慮せずに住宅ローンを組んでしまうと、後々後悔することになってしまいます。
また、結婚して子どもが生まれた場合、教育費も考慮しておきたいし、老後を見据えた貯蓄もしておきたいですよね。住宅ローンは借入期間が長期になるため、返済している35年の間にどんな”まさか”があるかわかりません。ライフプランの見直しは常に必要になってくるのです。もしも失業したら、転勤したら、親の介護が必要になったら…。そんな”まさか”の状況に陥り「こんなはずではなかった」とならないためにも賢明にならなければいけません。住宅を購入した場合は、賃貸に住んでいるときに比べて、毎月3〜5万円程度の費用がかかると考えておきましょう。
最悪のケースを想定する
不動産の場合、購入の仕方によっては数百万円の違いが出てくるなんてこともざらです。そのため、いかなる場合でも”最悪のケース”を想定しておかなくてはいけません。【ある程度大丈夫だろう】という楽観的な計画ではなく、【ある程度耐えられるように】予想外のことを想定して計画していく必要があります。最悪のケースを想定していたけれど、何も起こらなくてラッキーだったな、となるぐらいでちょうど良いのです。リスクを高めに算出し、”まさかの事態”が起こっても対応できるように計画していきましょう。
まとめ
我が家はライフステージに合った住居に住みたいと考えているため、現在は流動性のある賃貸に住んでいこうと考えています。その時の一番住みやすい環境で生活できるって魅力的ですよね。ちなみに現在の家賃が7万円のため、30年済むとして毎月のランニングコストを加味した場合に購入できる物件は1300万円(一括購入の場合)ほどです。これだと希望の物件はなかなか見つかりません。”夢のマイホーム”は確かに響きが良いですが、今の時代スマホや自動車などの毎月の出費が大きな負担になっています。自分の暮らしの中で優先順位を決めて、何にお金をかけるのか慎重に考えて行動していきたいものですね。
また【リフォームの費用を安くする方法】では、今人気の中古物件リフォームについてお話ししています。新築を購入するよりも中古物件を安く購入し、中を自分好みにリフォームしたいという方に向けて、リフォーム費用を安く抑える方法や、リフォームをする際の注意点についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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