先輩看護師に聞くと、ひと昔前は、手術する患者は1週間前に入院してゆっくり術前検査をしてから手術に臨むことが多かったそうです。しかしながら、在院日数の短縮化が進んでいる今では、特別な理由(ヘパリン置換など)がない限りはそんなことはありえません。基本的に術前検査は外来で行い、手術直前に入院となる患者がほとんどです。
このように限られた時間の中で、術前看護として必要なことを挙げておきます。
インフォームドコンセントへの同席
手術するにあたり、患者と家族が医師からどのような説明を受けているのか、それに対する反応はどのようであったかを確認することは大切です。医師の中には、患者の反応を無視して話を進めて、ただ書類にサインをもらうためだけにインフォームドコンセントをしている人もいます。患者や家族の受け入れ状況を確認して、必要に応じて、2回目、3回目とインフォームドコンセントをセッティングすることも必要です。
術前オリエンテーションの実施
入院日から手術当日、術後から退院までの一連の経過を、患者とその家族に説明します。通常、オリエンテーション用の説明用紙が施設毎に用意されています。
個人的に、有効なオリエンテーションにするためのポイントは以下の4点です。
1:術後に目が覚めるとどのような状態なのかを説明する
酸素マスク、心電図モニター、血圧計、点滴ルート、ドレーン、膀胱留置カテーテル、オムツ、フットポンプなどなど・・・術後、麻酔から覚醒後は体に様々な装置がついており、不安が強くなります。事前に説明することで患者の不安を軽減させることができます。
2:痛みを我慢しないことを伝える
薬剤による疼痛コントロールを行うことを説明します。それでも疼痛が自制外ならば遠慮なく訴えてよいことを伝えておきます。
3:術後早期離床を説明する
特別な医師の指示がなければ、術後1日目より離床を行うことを説明します。単に「すぐに起き上がってもらいますよ」と言うと、否定的な捉え方をする患者・家族もいます。そこで、肺合併症や廃用症候群の予防のために早期に離床を促しているということまで説明します。また、この時にもしっかりと疼痛コントロールを行うことを伝えておきます。
4:説明後は時間を空けて内容のフィードバックを行う
これは医師のインフォームドコンセントの際にも重要ですが、説明された直後の患者・家族は頭がいっぱいいっぱいになります。そんなときに看護師から「何か分からないことはないか?」と聞かれても答えられない患者が多く、「何が分からないかも分かりません」「そちらに全てお任せします。私はまな板の上の鯉ですからね」と返答される患者がほとんどです。そこで、説明直後だけではなく、時間を空けて「昨日の説明で分からないことはありませんでしたか?」と聞くと、かなりの患者が疑問を持っていることがあります。
術前より指導が必要な手術の場合には概略だけでも伝えておく
術後にドレーン挿入が予測される手術では、術前からドレーンの説明を行います。可能ならば、模擬ドレーンと排液バックを用いて練習しておくことも大切です。そうすることで患者の理解が進み、術後のドレーン事故抜去を予防することができます。
また、ストーマ増設術では、術後に患者や家族の管理が必要となってくるので、できるだけ模擬ストーマを使用して便廃棄や装具交換の練習をしておきます。
まとめ
術前看護は、入院の手続きや患者の情報収集などの仕事に加えておこなう必要があるので、正直大変です。しかし、患者の不安軽減に大きくつながりますので、有効な術前看護をおこなっていきましょうね。
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