はじめに
現場では実際に口に出すことはありませんが、僕は採血が得意です。スタッフが失敗した場合に、「代わって下さい」と声をかけられることが多いですし、90%以上は失敗せずに実施できる自信があります。
そんな僕でも、初めから採血が得意だったわけではありません。看護師として働き始めた1~2年目までは3人に1人くらいの頻度でしか成功できていませんでしたし、採血が嫌で仕方ありませんでした。
先輩に採血のコツを聞いても、「採血は慣れだよ、数をこなすしかないよ」というアドバイスのようなものしか答えてもらえませんでした。
そんな僕だからこそ紹介できる、採血のコツについて紹介します。
1:左右どちらの腕で採血をすることが多いのか患者へ尋ねる
「いつもはどこで血を採ることが多いですか?」
初めて採血をさせてもらう患者には、できるだけこの質問をするようにしています。
採血困難な患者であるほど、詳細に「こっちの腕のこの辺りが上手くいくことが多いよ」と教えてくれますし、良い血管を探す時間を短縮することができます。
患者との会話のきっかけにすることで、お互いの緊張をほぐす効果もあります。
2:血管を逃がさないようにがっちりと固定する
新米看護師に多いのは、針を刺すことに頭がいっぱいになってしまい、逆の手で血管を固定することが疎かになってしまうことです。
僕の経験上、採血の成功には血管の固定が70%を占めています。針の角度などは30%以下に過ぎません。
3:ライトを当てる。ただし・・・
どんなに明るくても、ライトを使用しています。ライトにより、血管の微妙な明暗が分かるからです。ただ、患者の腕の真上からライトを当てても明暗は出にくいので、やや斜め上から明暗がでやすいように当てています。
4:できるだけ針を寝かせて穿刺する、もちろんこれは大切。でも失敗してしまう時には?
「血管はしっかり固定している、なるべく針を寝かせて穿刺している、それでも採血が上手くいかない!」
そんな経験はないでしょうか?僕はこれでずいぶんと悩みました。
どの参考書を読んでも、「針は寝かせろ」「30度の穿刺角度を守れ」と書いてあり、それを守っているのに上手くいかないことが続きました。
そんな時に気付いたのが「針はそれほど寝かせなくても良い」ということです。
もちろんケースバイケースですが、
・血管にある程度の太さがある
・血管が動きやすい(逃げやすい)
上記の場合には、針を寝かせて穿刺すると血管の外壁を針が滑ってしまい、失敗する場合が多いです。
だからといって45度以上で穿刺することはNGですが、「寝かせて穿刺する」というイメージではなく、「針を立てて血管外壁を滑らないように突き刺す」というイメージです。
そのままでは血管を貫通してしまいますので、針からの逆血を確認したら、針を寝かせて外筒を挿入させます。
原則は守っているのに採血が上手くいかない場合には、試してみて下さい。
5:正肘にこだわらない
採血は正肘でするもの。これは確実性や安全性から正肘が選択されることが多いというだけです。しかし実際には、正肘に良い血管がある患者ばかりではありません。正肘で失敗するくらいならば、多少痛みが強くても確実なほかの部位(手背など)を選択する方がベターです。
手背からの採血は患者がビックリすることがあるで「ここで確実に採らせて下さい」と伝えておくことが大切です。
6:浮腫が強くて血管が全く見えない場合には
全身の浮腫が強い患者に採血オーダーが出されると、「いやいや、無理でしょ?採れるもんなら先生が採って下さいよ」と、医者に文句も言いたくなりますよね。ですが、指示が出されたからには努力しなければいけません。
このような患者の場合に僕が行っているのは、採血の前から上肢を枕に乗せて挙上しておくことです。浮腫の程度にもよりますが、患者の負担がない程度に1時間~30分くらい挙上しておくことで、一時的に上肢の浮腫が軽減して、手背の血管が目視できるようになることがあります。
7:採血が失敗した場合を想定しておく
「もし失敗したら、あの看護師さんに交代をお願いしよう」
これを考えておくと、緊張せずに採血できます。かなりの困難が予測される場合には、「〇○さん採血行ってきます、たぶん失敗するんで準備しといてくださいね」なんて冗談をまじえながら事前にお願いしておくこともあります。
8:別に初めから手袋はしなくても良い
針刺し事故防止のために採血時に手袋をすることは必要ですが、血管を探しているときには素手でも構いません。手袋をしながら血管を探している看護師もみかけますが、血管が細い患者ほど困難です。よほど自信がなければ、素手で血管を探した後に手袋をして採血実施が良いでしょう。
9:グー・パー、グー・パーはNG
血管が見えにくいからといって「グーパーしてくださいね」と患者へお願いするのは、クレンチングといって、採血結果のK値が上昇する可能性があるので推奨されません。
血管が見えにくい場合には、
・温かいタオルなどで加温する
・一旦、腕を体よりも下に下げてもらう
ことで見えやすくなることがあります。
11:無理なものは無理
どれだけ工夫しても採血が不可能な場合は、頻度は低いですが起こり得ます。
複数人の看護師で確認して採血が困難だと判断されれば、医師へ報告して動脈より採取してもらうか、オーダーの必要性を再確認してもらう必要があります。
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