褥瘡の常識!クリティカルコロナイゼーションって知ってる?

褥瘡

少し前の話になりますが、2016年に東京で開催された創傷治癒学会に参加してきました。医師の研究発表が多く、内容を理解するのが難しかったのが印象的でしたね。

そこでトピックスの一つだったのがクリティカルコロナイゼーション:臨界的定着という言葉です。

実際の臨床では聞き慣れない言葉でしたが、内容を聞いてみると何度か思い当たるケースがありました。

クリティカルコロナイゼーションって何?

クリティカルコロナイゼーションを理解する際には、創部の感染を段階的に考えると分かりやすいと思います。

  1. 創部の汚染
    患者の抵抗力が勝っており菌が増殖できない段階
  2. 定着
    創部の菌が増殖し始める段階。菌が増えているが、まだ患者への影響はない。
  3. クリティカルコロナイゼーション
    菌の増殖が進み、創傷治癒が遅延している段階。治癒遅延はあっても、炎症症状はない。
  4. 創部の感染
    菌が侵入して感染症状を起こしている段階

創部が汚染された=すぐに感染ではないんです。汚染により菌が増殖していくことで感染へと移行します。感染の一歩手前がクリティカルコロナイゼーションです。

一応、日本褥瘡学会のクリティカルコロナイゼーションの定義も載せておきます。

 創部の微生物学的環境を、これまでの無菌あるいは有菌というとらえ方から、両者を連続的にとらえるのが主流となっている。すなわち、創部の有菌状態を汚染:Contamination、定着:Colonization、感染:Infectionというように連続的にとらえ、その菌の創部への負担と生体の抵抗力のバランスにより感染が生じるとする考え方である。臨界的定着はそのなかの定着と感染の間に位置し、両者のバランスにより定着よりも細菌数が多くなり、感染へと移行しかけた状態を指す。

日本褥瘡学会用語集より

クリティカルコロナイゼーションってなぜ注目されているの?

これまでは感染段階まで至った創傷に対して、デブリードマンや感染抑制作用がある軟膏の使用、抗菌薬の使用が行われてきました。しかし、この段階まで至った創傷は治癒するまでに時間かかることは臨床的に誰もが経験があることだと思います。

もし、感染段階に至る前のクリティカルコロナイゼーションの時に適切な対応を行うことができれば、創傷治癒にかかる時間も短縮され、患者の負担も少なくなります

クリティカルコロナイゼーションはどうすれば判断できるの?

創傷が感染すれば、感染兆候がみられますから、感染の有無は判断できますよね。しかし、クリティカルコロナイゼーションの段階では感染兆候を呈しません。クリティカルコロナイゼーションの段階での臨床徴候は以下のようなNERDSでとらえるのが一般的になります。

N:Nonhealing wound 創傷の治癒遅延

E:Exudative wound 浸出液の増加

R:Red and bleeding wound 赤い創底で易出血

D:Debris in the wound 壊死組織

S:Smell from the wound 悪臭

クリティカルコロナイゼーションの治療方法は?

クリティカルコロナイゼーションの治療には、➀メンテナンスデブリードマンの実施、②抗菌性のドレッシング材の使用が重要です。

➀メンテナンスデブリードマン

クリティカルコロナイゼーションでは細菌が定着・増殖しています。そのため、細菌の温床となる壊死組織をデブリードマンしても、時間経過とともに再度、細菌が増殖してしまいます。そこで、繰り返してデブリードマンを行う必要があり、このことをメンテナンスデブリードマンといいます。

しかしこれは、医師や特定行為研修を修了した看護師しか行うことができません。私たち一般の看護師ができるのは、とにかく洗浄!強固洗浄!創面のネバネバしたもの(バイオフィルム)を全て取り除くつもりで入念に洗浄します。

②抗菌性のドレッシング材

メンテナンスデブリードマン+洗浄にて物理的に細菌を攻撃し、さらに銀配合ドレッシング材やヨウ素製剤軟膏の使用にて細菌の増殖を抑制します。

まとめ

クリティカルコロナイゼーションについてまとめてみました。

「そんなに深い褥瘡ではないのに、やたら治りが悪いな」

「創面がネバネバした膜のようなもので覆われている」

こんなときにはクリティカルコロナイゼーションを念頭においた対応が必要になります。

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